有機エレクトロニクス材料

形状記憶ポリマー基板を用いた有機オプトエレクトロニクス

Canek Fuentes-Hernandez, Bernard Kippelen

Center for Organic Photonics and Electronics (COPE),
School of Electrical and Computer Engineering,
Georgia Institute of Technology, Atlanta, Georgia 30332, USA

Material Matters 2017, 12(3), 12 → PDF版

はじめに

過去50年間にわたるデバイス集積化の結果、集積回路の驚くべき小型化と計算能力の向上が達成されています。モバイルコンピューティングの時代、ポケットサイズのスマートフォンには、数十億個のトランジスタを持つプロセッサと数百万画素のディスプレイおよびカメラが搭載され、1秒間に数十億回の計算を実行する能力を持ち、その計算能力は1996年に世界で最も高性能だったスーパーコンピュータのIBM Deep Blueすらも上回っています。モバイルコンピューティングは、この10年間でインターネットとともに情報革命を起こしています。そのため、ウェアラブル・デバイス、ロボット工学、自律走行車に使用される、軽量、フレキシブルで伸縮可能な電子機器に対して新たに関心が高まっており、ユビキタスコンピューティングおよびモノのインターネット(IoT:Internet of Things)というビジョンの実現に近づいています。同時期に、生物学的プロセスを制御する新技術によって生物科学および医学にも革命が起きており、生物学的世界とオプトエレクトロニクス技術との間のギャップを橋渡しする、伸縮可能で柔軟な電子デバイスに対する期待が急速に高まっています。このような状況において、新世代の伸縮性半導体や基板、オプトエレクトロニクスデバイス構造が、モバイル機器の膨大な計算能力がもたらす情報を相互に補完する形状や機能(センシング、発電および電力貯蔵、ワイヤレス通信など)をいつでも実現できる状態にあります。これら技術の融合により、人間の自然界とデジタル世界との体験、関わり方が劇的に変化する可能性があります。本稿では、形状記憶ポリマー(SMP:shape memory polymer)基板を用いた有機オプトエレクトロニクスデバイスの開発を中心に、ソフト・オプトエレクトロニクス分野の進展についてレビューします。

ソフト・オプトエレクトロニクスの出現

近年、オプトエレクトロニクス用「ソフト材料」に対する関心が非常に高まっており、薄膜トランジスタ、太陽電池、イメージングアレイ、発光ダイオードをはじめとする、軽量、フレキシブルで伸縮可能なデバイスの優れた成果が多数報告されています1。大幅な進歩がみられるものの、新規デバイス構造のみならず伸縮性半導体材料に関する革新がさらに要求されています。材料の観点から、セル構造材料(cellular material)、エラストマー、ポリマー、ポリマー複合材料、セラミックなどの新規材料は、自然界の生物材料に見られる特性とより適合する熱機械的性質を持つように設計されなければなりません。同時に、これらの新たな材料がデバイス構造内で機能するために必要な光学的および電気的な特性を維持する必要があります。これら要件を理解するために我々が考慮しなければならないのは、材料の種類にもよりますが、一般的に生物材料は低密度(<3 g/cm3、ヤング率:kPa~100 GPa程度)で、降伏強度および破壊強度が数十kPaから最大で数GPaの間である点です2。例えば、天然のエラストマーである皮膚、筋肉、動脈のヤング率は80 MPa未満で、強度は10 MPa未満です2。これに対して、無機材料の密度は2~20 g/cm3、ヤング率は10~1,000 GPa、強度は8~2000 MPaであるため3,4、金属、金属酸化物、無機半導体のような剛性の高い材料で構成される従来型オプトエレクトロニクスデバイスとの差異は際立っています。さらに、これら材料は一般に高効率電荷輸送を可能にするための高い結晶性が必要であり、柔らかな生物物質とは通常相容れない高温で処理されます。

課題があるにもかかわらず、リジッドな材料はフレキシブルで伸縮可能でもあるオプトエレクトロニクスデバイスの作製に用いられています。これを理解するためには、剛性材料の薄い板の柔軟性が、(薄板の厚み)3に左右される「曲げ剛性D」として定量化され、ヤング率に比例し、1-(材料のポアソン比)2に反比例する点が重要となります(ポアソン比とは、ある伸長方向に対して縦方向の変形に対する横方向のひずみの比で、通常は硬い材料の0.1から柔らかい材料の0.5の間の値を示します)5。そのため、数百GPa程度の大きなヤング率を持つ剛性材料(ガラス、金属、シリコン、金属酸化物など)の膜を、通常は数十~数百ナノメートルの厚さまで十分に薄くすることで、比較的柔軟性をもたせることが可能です4

剛性材料の薄膜で構成されるオプトエレクトロニクスデバイスはフレキシブルになり得るものの、通常、伸縮性はあまり高くありません。剛性材料から伸縮可能なデバイスを作製する方法として、図1に示す3つの主な方法が検討されています。第一の方法は、エラストマー基板に堆積または転写した個々の小型素子を伸縮可能な配線で接続する方法です。第二のより一般的な方法は、予め伸長したエラストマー基板の上にフレキシブルな機能性デバイスを作製または積層して、引っ張りから解放させたときにひだを作るようにする方法で、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)のような柔らかい弾性基板上にリジッドな材料で構成される伸縮性オプトエレクトロニクスデバイスの作製に使用されています1,6。一方、ナノ粒子やナノワイヤなどのナノ構造材料の出現により、フレキシブルかつ伸縮可能なデバイスの実現に向けた別の方法が可能となっています。この方法では、Agナノワイヤのようなナノ材料をエラストマーモノマーと混合後に硬化させることで、PDMSなどのエラストマーマトリックスに埋め込まれたナノ材料のパーコレーション構造を作製します7。さらに、ソフトリソグラフィを利用して共晶合金(室温で液体の共晶ガリウム–インジウム合金:EuGaIn)をPDMSに埋め込むことで伸縮可能なセンサーを作製する方法もあり、完全に伸縮可能な電極開発に向けた有望な手段となる可能性があります8

伸縮可能なオプトエレクトロニクス実現へのアプローチ

図1 伸縮可能なオプトエレクトロニクス実現へのアプローチ。A) 個々の素子を伸縮可能な配線で相互に接続する方法。B) 予め伸長したエラストマー(弾性)基板上にフレキシブルなデバイス層を堆積して、引っ張りから解放されたときにひだ状になる伸縮性デバイスを作製する方法。C)ナノ材料をエラストマー単量体と混合してから硬化する方法。

有機オプトエレクトロニクス

無機半導体とは対照的に、有機半導体の熱機械的特性(3 g/cm3未満の低密度および0.1~1 GPaのヤング率)9は、柔らかい生物材料の性質と良く適合します。さらに、有機半導体薄膜は、多様な種類の柔らかい弾性基板に適合する温度で溶液から処理されます。そのため、この有機半導体フィルム(ポリマー、低分子、ブレンド)を使用し、曲げ半径数マイクロメートルで曲げても作動を続ける薄膜トランジスタや太陽電池10,11など、極めてフレキシブルなオプトエレクトロニクスデバイスが実現しています。これら有機半導体は本質的にフレキシブルですが、その伸縮性は分子量、固体状態での分子充填、分子組成に大きく依存します9,12–14。一般に、アモルファスポリマー薄膜は伸縮性を含む優れた機械特性(小さなヤング率など)を示しますが、結晶性ポリマーや低分子のようなより剛性の高い材料からなる膜と比較すると、電荷輸送特性は劣っています12。このトレードオフの関係のため、伸縮可能なオプトエレクトロニクスデバイスでも、予め伸長した基板上にひだの寄ったデバイスを作製する方法や、弾性マトリックスに埋め込んだカーボンナノチューブなどのナノ材料を使用する方法15など、無機半導体と同様の方法が多く用いられています。しかし、近年、合成化学や組成操作による有機半導体特性の制御が可能になったことで、本質的に伸縮可能な有機半導体層の開発に向けた重要な成果が得られています。1つの方法として、柔軟性のある弾性マトリックス(SEBS:polystyrene-b-poly(ethylene-ran-butylene)-b-polystyrene)内部での相分離により、高移動度半導体ポリマーからなる高分子半導体ナノファイバーを形成する方法で、100%のひずみを加えても0.5~1 cm2/Vsの電荷移動度を示す高伸縮性高分子半導体フィルムや薄膜トランジスタが開発されています16。第二は、伸縮可能な配線による素子の接続と似た手法で、結晶領域の形成は阻害せず、アモルファス領域ではフレキシブルなポリマー鎖の間に動的な非共有結合性架橋を形成するような化学構造を共役ポリマー骨格に付加することで、共役ポリマーに分子的伸縮性を与える方法です。この動的結合は、ひずみが加わった際に容易に開裂してアモルファス領域を介したエネルギー散逸を可能とし、より秩序性の高い領域における電荷移動を維持します14。この方法で作製した半導体ポリマーフィルムや薄膜トランジスタは、約1 cm2/Vsの電荷移動度を維持しながら最大100%ひずみまで伸長することができます14。加えて、優れた伸縮性が得られるだけでなく、自己修復も可能になります14

新規の材料、材料加工、デバイス設計の開発における着実な進歩を受けて、有機薄膜トランジスタ(OTFT:organic thin-film transistor)、有機EL(OLED:organic light-emitting diode)、有機太陽電池(OPV:organic photovoltaic)などの有機系オプトエレクトロニクスデバイスの性能および安定性が大幅に向上しています。各分野での膨大な数の成果に関する詳細は、ここでは触れません。

柔軟性を有する弾性基板

弾性基板の選択は、すべての伸縮可能なオプトエレクトロニクスデバイスの作製において非常に重要となります。弾性基板に必要な特性として、(1)ヤング率が目標とする生物材料の値に近いこと(例えば、皮膚のヤング率は約0.7 MPa)、(2)亀裂の形成を避けるためポアソン比が小さいこと、(3)繰り返し変形に耐えうるように熱機械的安定性に優れていること、(4)オプトエレクトロニクスデバイスの直接作製が可能な化学的安定性および生体適合性を有すること、(5)標的とする生物材料との適合性、が挙げられます。現在、伸縮性デバイスの弾性基板には依然としてPDMSが最も広く使用されています。PDMSは優れた安定性と生体適合性を示しますが、通常、伸縮性は最大200%に制限されます。約700%の伸縮性を実現する代替材料には、Ecoflex(白金触媒を用いるシリコーンラバー)やpoly[styrene-b-(ethylene-co-butylene)-b-styrene]樹脂、3M™ VHB™ 4905(汎用アクリル系接着剤を使用した透明テープ)17,18があります。その他の弾性基板として、ポリウレタンおよびポリアクリラート・エラストマーがあります6

形状記憶ポリマー

将来性のある様々なソフト基板の中でも、生物医学、ロボット工学、自律走行車への応用開発において多数の魅力的な特性を持つ新たな刺激応答性ポリマーとして、形状記憶ポリマー(SMP:shapememory polymer)が注目を集めています。SMPは、外部刺激に応答してその形状を変える能力を持っており、この刺激が温度の場合、SMPは熱応答性となります。熱応答性SMPは、温度に依存した3つの状態を取ります。低温のガラス状態は大きなヤング率と低い変形性が特徴です。温度を上げると、材料が軟化して疑弾性的な性質を示す領域が現れます。この領域を特徴付けるのがガラス転移温度Tgで、ヤング率の値はTg付近で急激に減少します。Tgより高い温度になるとSMPはゴム状領域に入り、低いヤング率と高い変形性を示します。この領域では、SMP形状を変化させることが可能で、温度をTg未満に下げても、変形した状態を保存(維持)できます。SMPを再度Tgより高温に加熱すると、ゴム状状態に転移して元の形状に戻ります。この形状回復機構を理解するためには、系のエントロピーが最小となるような、応力のない、全体の自由エネルギーが最小となる状態でSMP内のポリマーネットワークが形成されることを考慮する必要があります。加熱、変形、冷却の際に、ポリマー鎖の配置が変化すると機械的応力が保存され、より高エントロピーの応力がかかった準安定な平衡状態になります。加熱し、さらなる機械的変形がなくなると、この平衡状態から元のポリマー形状によって特徴付けられる低エントロピーかつ応力フリーの状態に戻ります。図2にこの過程を示します。ここでSMPは湾曲した形に成型しています。SMPの形状回復能力は、回復可能なひずみとして定量化されます。その結果、SMP基板の剛性と形状の制御が可能であることから、ソフト・オプトエレクトロニクスデバイスの作製、操作、利用において弾性基板に対する利点となる可能性があります。

湾曲した形状記憶ポリマーの形状回復の様子

図2 湾曲した形状記憶ポリマー(SMP)の形状回復の様子

形状記憶ポリマー基板を用いた有機エレクトロニクス

最近、チオール – エン反応を用いた、生体適合性を示し19–21、機械的な適応性を有するOTFTのアクティブ基板22–26としての用途に適したSMPが開発されています。チオール – エン反応(クリック反応)に基づくSMPでは、重合反応が逐次的に進行するため低い硬化応力を示し、その結果、金属層への強い接着性だけでなく、収縮性および表面粗さの少ない、均一性と寸法安定性に優れたポリマーネットワークが得られます。さらに重要なのは、構成するモノマー濃度の制御によって多様な材料特性(Tg、ゴム状弾性、疎水性など)を調節できる点にあります。例えば、1,3,5-triallyl-1,3,5-triazine-2,4,6(1H ,3H ,5H)-trione(TATATO)、trimethylolpropane tris(3-mercaptopropionate)(TMTMP)、および光硬化剤の2,2-dimethoxy-2-phenyl acetophenone(DMPA)のブレンドにおいて、tricyclo[5.2.1.02,6]decanedimethanoldiacrylate(TCMDA)の濃度を変えると、SMPのTgが変化します。最近、我々はこのSMPの組成を用いて、二層ゲート誘電体を用いたトップゲート型OTFTや有機ELの実現の可能性を探りました。

我々は以前、CYTOPの第一層と原子層堆積法(ALD:atomic layer deposition)で作製した金属酸化物の第二層からなる二層ゲート誘導体を使用すると、動作安定性および環境安定性に優れたnチャンネルおよびpチャンネルのトップゲート型OTFTを作製できることを示しました27,28。この方法では、二層ゲート誘電体が環境に対する障壁の役割を果たし、電荷トラップにより起きる閾値電圧シフトを補う二次的な機構(双極子配向や電荷注入など)を提供します。このデバイス構造で作製したOTFTは、沸点に近い温度の水に長時間浸漬可能で29、水性条件下で安定して作動する化学センサーおよび生体センサー30,31の実現が期待されます。さらに、我々はTgが43℃になるように設計したチオール – エン反応で作製したSMP基板上のトップゲート型OTFTおよび回路の特性32を研究しました。図3に、溶液プロセス法で作製したOTFTで構成される単独デバイスおよび疑相補型インバータ回路の特性を示します。二重層は35 nmのCYTOP層と厚さ31 nmの誘電体のナノラミネート構造29で構成され、厚さ約130 μmのSMP基板上にALD法で作製しました。1種類の材料から作製したALD層と比較すると、ナノラミネート構造を用いたことで、おそらくALD層作製の際に生じた残留引張応力が減少するため、機械的な変形の際の亀裂が減少しました33。ソース電極およびトレイン電極上へのp型ドーパントであるMo(tfd)3(molybdenum tris[1,2-bis(trifluoromethyl)ethane-1,2-dithiolene])34–37の蒸着により、SMP上のOTFTは接触抵抗が非常に小さく、移動度が0.9 ± 0.59 cm2/Vsの値を示します。この性能は、ガラスまたはプラスチック基板上のトップゲート型OTFTに匹敵しています。さらに、室温でデバイスは良好な柔軟性を示し、曲率半径が7 mm(約0.9%のひずみ)までの圧縮曲げサイクル試験の前後で伝達特性に変化は見られません。また、熱による形状変化をOTFTが受けた場合、曲げ半径が約14 mmまでデバイスは高性能を維持しますが、これを超えるとALDによるナノラミネート層に亀裂が生じ、性能は低下します。したがって、形状変化の過程でおそらくデバイスに大きなひずみが加わっていることが示唆されます。注目すべき点として、代表的な多結晶性有機半導体層9,12やALD層38では、約1~2%の範囲の臨界引張ひずみに達すると、大きな亀裂が発生したり、破損したりすることが知られています。ALD層の使用は完全に伸縮可能なデバイスの開発に制限を加える場合もありますが、極端に大きな変形を必要としない用途では、その制約は、デバイスの性能および安定に関する利点によって相殺される可能性があります。他にも、予め伸長したSMP上にOTFTを作製することで、環境安定性および動作安定性に優れたOTFTの機械的な復元力を向上させる新たな方法が得られるかもしれません。

SMP基板を用いたOTFTの特性

図3 A)SMP基板を用いたOTFTの曲げ前後の伝達特性。B)60℃での熱による形状変化前後のSMP上のOTFTの伝達特性。C)熱による形状変化前後の疑相補型インバータ回路の出力特性。D)湾曲した SMP基板上の疑相補型インバータ回路の写真。

なお、上記以外にOTFTの環境安定性を向上するために7,7,8,8-Tetracyanoquinodimethane(TCNQ)や2,3,5,6-Tetrafluoro-7,7,8,8-tetracyanoquinodimethane(F4TCNQ)および4-aminobenzonitrile(ABN)39などの添加剤を使用して欠陥を除去する方法がありますが、動作安定性と環境安定性の双方に優れた伸縮性OTFTの開発するためには、アプローチの改善が必要です。

一方、有機ELも、特に生体適合性SMP基板上に作製される場合、放熱の少ない、光遺伝学(optogenetics、オプトジェネティクス)やその他生体工学用途で魅力的な特性を有する大面積光源の開発において非常に注目されています。SMP基板上の有機ELが最初に発表されたのは、酸化インジウムスズ(ITO)の代替として単層カーボンナノチューブ/ポリマー複合材料の電極を使用した例においてです。これらデバイスでは、最大電流効率が200 cd/m2において1.24 cd/A、ターンオン電圧が4.8 V、最大輝度が300 cd/m2を示しました。最近、我々はトップエミッション型逆構造緑色燐光有機ELを生体適合性SMP基板上に作製し、電流効率33 cd/A(3.4 Vの低ターンオン電圧、1,000 cd/m2の高輝度)が得られたことを報告しています。これら素子の最大輝度は30,000 cd/m2以上で、高レベルの照射量を必要とする生体工学用途に最適です40。さらに、これらサンプルの形状を変えて軟化させ、曲げ半径5 mm(ひずみ約1.5%)の曲線形状にすることが可能です。このデバイスは、低輝度(100 cd/m2)で性能が大幅に低下しますが、大きなバイアスを加えた場合でも同等の性能を示すため、高輝度を必要とする用途で非常に有望です(図4)。測定したすべての素子が最初の加熱および再成形に耐え、元の形状に戻りました。生体適合性SMP上の有機ELの性能および熱機械的性質をさらに改善する方法として、熱活性化遅延蛍光(TADF:thermally-activated delayed fluorescence)発色団41や、高いTgを示す電子および正孔輸送材料42の使用が考えられます。これら研究では、フレキシブルかつ適合性のあるデバイス向けに、トップエミッション型逆構造有機ELをSMP基板上に熱蒸着できることが示されており、幅広い応用可能性が紹介されています。ただし、これら蒸着有機ELの機械的性質にはまだ制約があり、形状変化を繰り返したり、より過酷な変形を受けた際に、金属層への亀裂や最終的な有機ELの破損につながる可能性があります。SMPを用いた有機ELに関する破損原因の評価や機械的信頼性を確保するための最善な方法を探るためには、詳細な研究が必要です。

SMP基板を用いた有機EL

図4 形状回復後のSMP基板を用いた有機ELの電流効率の変化および湾曲させた状態でのデバイスの画像

結論および今後の展望

SMPのような柔軟性基板上の有機オプトエレクトロニクスの可能性を最大限に活かすためには、いくつかの課題に取り組む必要があります。最優先すべき要件の1つは、ソフト基板上に作製したデバイスの環境安定性および動作安定性を十分に確保することです。環境安定性の改善と水分透過に関する制約の低減を目的に、リジッドなバリア層の使用可能性について理解を深めるため、柔らかい弾性基板上にALD法で堆積したバリア膜などの研究が必要です。材料の観点では、酸化されにくいフロンティア軌道を持つ有機半導体の開発において大幅な進歩がみられています30,43–45。また、ナノ凝集体への電荷輸送の閉じ込めも、伸縮可能であると同時に周囲の酸素および水との相互作用を受けにくい材料の開発において有望な方法であると考えられます。さらに、分子添加剤によりOLED46、OTFT39、およびOPV47の安定性が向上することが最近示されています。一方、界面設計に関する進展から、仕事関数の制御がデバイス安定性を改善する効果的な方法であることが示されています。例として、polyethylenimine ethoxylated(PEIE)および分岐ポリエチレンイミン(PEI:polyethylenimine)が、環境安定性を有する様々な導体から電子注入および収集が可能であることを我々は見出しましたが48、OPVの安定性向上にも寄与することが明らかになっています49。仕事関数を減少させる他にも、これら材料は有機半導体のn型ドーピングにつながり48、その結果、n型ドープ領域が相分離によって形成される可能性があり、OPV内で自己組織化した電子収集界面の生成が見られています50。同じように、p型ドーパントを使用することで、反応性の高い金属を使用せずに環境安定性の高い界面を形成する方法の実現が期待され、デバイス構造の簡素化につながる可能性もあります。例として、我々は最近、薄膜作製後、リンモリブデン酸(PMA:phosphomolybdic acid)のニトロメタン溶液中に浸漬すると、有機半導体膜が限定的な深さまで効率的にp型ドープされることを見出しました。界面を電気的にドープできるため、用いる金属の仕事関数による制約がなくなり、膜形成前にPEIEを光活性層溶液に混合して作製したバルクヘテロ接合フィルムに適用することで、電子収集および正孔収集の機能性が光活性層に組み込まれた単層OPVを得ることができます51。このように、伸縮可能な有機半導体およびデバイスの開発はまだ初期段階にあるものの、有機オプトエレクトロニクス分野の進歩により、機械的に柔軟なだけでなく、次世代の伸縮性オプトエレクトロニクスデバイスに要求されるレベルの性能を発揮できるデバイスの実現が期待されます。

Acknowledgements

We would like to thank funding in part from MilliporeSigma (Sigma Aldrich), the Office of Naval Research Awards N00014-04-1-0313, N00014-14-1-0580, and N00014-16-1-2520 through the MURI Center CAOP.

ソフトエレクトロニクスについては右記のページもご参考ください。
     

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